クリームの種類 1

缶入りか瓶入りかチューブ入りかどれを使う?

一般的な革の靴を磨くにあたって必要なものとして


とりあえずは無色か色つきの乳化性クリームと、


布かブラシさえあれば(両方あればなお良いです)靴磨きは可能です。


ちょっとした汚れもおおかたの乳化性クリームには界面活性剤を含んでいるため、


クリーナーを使わずに落ちてしまいそのままきれいになります。


ワンタッチで濡れる液体の製品も発売されていますが、


手軽に塗れる点では便利な反面、水性のワックスのようなもので


乳化性クリームほど革への保湿をおぎなうものではありません。


高額なタイプも出てかなり機能的に良くなってきていますが、


ほんとうに急いでいるときなどに限ってお使いになるくらいなほうが良いです。


ということで本来の革のためには手間はかかりますが


乳化性クリームのほうがおすすめできます。
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クリームの種類 2
おすすめは瓶入りかチューブ入りの乳化性クリーム

乳化性クリームとはチューブや瓶に入って売られている一般的なものです。

だいたい黒や茶などの主要な色以外は瓶で小売りされています。

瓶のほうが少量生産には向いているのでしょう。

色をおさがしになるときのコツは靴の色と同色のものがなくても

それより薄めの色を選ばれることで問題なく使えます。

むしろ色によってはそのほうが良い場合があります。

手入れの回数を重ねていくうち自然と濃くなっていくからです。

明記してあるを除いて、普通売られている乳化性クリームは

顔料が入っていないのでその色にそのまま染まるわけではありません。

色の褪せた革に色付きの乳化性クリームを塗ってもその色に復元するわけが

ないのはそのせいです。

また「ニュートラル」とか「つや出し」とも呼ばれている

色のつかない無色のクリームを代わりに使っても透明感ある光沢が出てなかなか良いですよ。
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クリームの種類 3
では缶入りクリームは?

男性のかたは靴のクリームと言えば

缶入りクリームの容器を思い浮かべるかたも多いでしょう。

買ったばかりの靴の手入れ用にと缶入りクリームを

指名して来られるお客さまは多いです。

でも最初からこれを使うのは以下の理由でさけた方が良いと

お話しして乳化性クリームをおすすめしています。

缶入りクリームは瓶やチューブ入りの乳化性クリームと成分が違います。

油と蝋(ろうそくの「ろう」です)で水分は含まれていません。

このクリームばかりを使っていくと

蝋の割合が多いので確かに光沢はでます。

でも、そればかり使っていると蝋分の影響でヒビが入りやすくなるのと

目がつまってしまい、人間でいう「厚化粧状態」になってしまいます。

女性の靴で使われるかたはほぼいらっしゃらないと思いますが、

紳士靴もふだんの手入れは乳化性クリームで行うことです。

そして使うときはつま先のアタマ周辺部分のみにできるだけ少量

(少量はクリームを塗るときの基本です)をつけて伸ばすくらいのほうが良いでしょう



靴磨きのローテーション
習慣づけましょう

靴はいったいどれくらいの間隔で手入れをしたら良いのでしょう。

外出するたびにクリームをかけるべきでしょうか。

確かに出かけるときに磨きたての靴を履くのは気持ちいいですが、

忙しい日々をおくっていると、履くときに「磨いておけば良かった」と

靴を見て思うときもあるのではないでしょうか。

 とはいっても毎日クリームを塗り込んでいくとその時はきれいになっても

概して毎日塗り込むことによって(たとえ薄めにしても)

靴に対してのクリーム量が過多になりがちです。

磨いたときに一時的にきれいになってもクリームの厚塗りで

ほこりが付きやすくなったりするので、かえって汚れを増長しかねません。

そこで習慣として

一週間に一度、「決めた曜日に」靴を磨く時間を設ける

ことをおすすめします。

まあすでにされているかたも多いとは思いますが、

曜日にあわせることで忘れにくくなり

結果的にもそれくらいの間隔がクリームをかけるに

ほどよいローテションともなるからです。


その際には靴の踵の減り具合などチェックをします。

人は知らずのうちに歩き方も変わって来ることがあります。

踵の中心線からバランス良く減っていれば問題ないですが

外側(小指の側)が減るようになったり、内側(親指の側)が減るようになったり、、、

外側が減りがちな場合は女性に多く、お年を召されるほど多く見受けられます。

若くて内側が減るかたはつま先を内側に入れる歩き方をする場合が多く、

そのような歩き方で片べりした靴をはき続けることによって

股関節や膝関節を痛め両膝同士が付かなくなる可能性もあります。

また知らず知らずのうちにつま先を引きずって歩いていて靴のつま先部が

削れてしまっていることに気がついたりすることもあります。

一週間に一度、ゆっくりと靴と過ごす時間を持つことによって

このように靴の状態だけでないく、自分の変化に気づくこともできます。

はやく気がつけば歩くときに意識することだけで容易に修正できますが、

そのまま放っておいて重症化するとお医者さんの手にかかるようになります。

靴を磨くときにはぜひ裏側までひっくり返して自分の歩き方の状態まで

確認してみてください。

一週間に一度、靴のメンテナンスをする時間を持つようにすると

靴もからだも長持ちします!

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下地づくり
正のスパイラルに

クルマをお持ちの方でワックスをご自分でかけるかたは、ほとんどのかたが

直前に洗剤を使って水洗いをして入念に汚れを落とす作業をされると思います。

靴の手入れの場合は磨く前ごとに洗うかたはまずいないと思いますが(笑)

それでもクリーナーを使って靴全体を拭いてから

靴クリームをかけるかたは多いと思います。

そしてクリーナーをクリームの一種だと思って靴に塗り込んでいるかたも

結構いらっしゃるようです。

日常普通に履いた状態での手入れでしたら、そこまでされることはありません。

ブラシでほこりをサッサッとはらって落とすくらいで済ますほうが

革には負担がかからないです。

もちろんそれは、前に書いたこともある、

ふだんの手入れにできるだけクリームは少量を使い伸ばすということを前提にした話で、

クリームを多くお使いになる傾向のかたですと、やはり

ほこり等がつきやすくなるためブラシだけだとほこりが落ちない
      ↓
落ちないからクリーナーを使う
      ↓
クリーナーで油分が取れるからクリームを多く使う
      ↓
ほこりがつきやすくなる

という”負のスパイラル”に陥っているかたはそうはいかないと思います。

革はもともと生きていた動物の皮膚で、靴の状態ではただでさえ乾燥する一方ですから、

いちいちクリーナーをかけていきますとぎん面(革の表面)にも

かなりのダメージを生じさせてしまいます。

たとえば黒以外のカラー、茶色や明るい色の革などで汚れを落とそうとして

シミをつくってしまったかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

ちょっとした汚れはクリーナーを使わずクリームを薄く伸ばしていけば、

けっこう自然に落ちるものです。

それでも落ちない場合に、クリームを塗った後にクリーナーを使うようにすれば、

はじめから直接クリーナーで汚れを落とすよりずっとシミにはなりにくいです。

でも、そこまでしてもまだ!落ちない汚れにはサドルソープという革用の石鹸を使った

さっきのクルマの話ではないですが究極の水洗いという方法があります。

そこまで汚す前に
ふだんの定期的な手入れを怠らないようにしながら

”正のスパイラル”で靴を磨く方が、

あまり一所懸命に下地作りをするより

「手入れも易しい」し、「革にとっても優しい」ので習慣づけることをおすすめします(^_^)


革のおはなし
素材の性格を知る

かんたんに靴の手入れに必要なものの説明をしてきましたが、

ところで靴に使われる革ってどのように作られるのでしょう。

「皮」は「鞣し(なめし)」という工程を経て「革」にかわります。

この作業を行うことでやわらかく長期の使用に耐える素材になるのです。

鞣し材には植物性のものと鉱物性のものに主に分かれます。

植物性のものは主にタンニンが使われ、靴でいえば主に底材に。

鉱物性のものはおもにクロム塩が使われていて、一般に甲革はこちらが使われています。

ちなみに靴が濡れて乾くと濡れた縁が白っぽくなってなかなか落ちないのは

雨や汗や汚れの痕ではなく、

鞣しまでの工程で使われている塩分が浮き出したものなのです

(鞣し工場まで皮は塩に漬けられ運ばれます)。

これを落とすのはクリーナーなどでは無理で、

もう一度水に漬けてしまった方が落ちると職人さんに教わったことがあります。

ただ靴の内側には布が貼り付けてあったりしますので、

染みこんで剥がれてめくれないよう注意が必要です。

もちろんそのあとは抜けてしまった脂分を適度な量のクリームで補填しなければ

ならないのはいうまでもありませんね。



クリームのかけかた 1
いよいよクリームがけです

いよいよクリームがけです

靴と同色の乳化性クリームをまず柔らかめの布に少量つけ

(茶系などは同色のもでも濃くなりやすいのでやや薄め色の方が良いでしょう)、

薄く伸ばすように靴にすり込みます。

色が合っているか不安な時は靴の踏まずの部分の目立たないところで試されると良いです。

布をかける方向はらせん状ではなく甲の部分は左右の方向、

つま先からかかとにかけてのサイドの部分は前後の方向と直線的にかけた方が

ムラがでにくいです。

ひととおりすり込んだら、ブラシがけをします。

力を入れないで軽くサッサッサッとリズミカルにすると革を痛めず光沢もでてきます。

そして布のきれいな面でカラ拭きをしていただければ完了です。

けっこうクリームをかけるなんてやってみればあっけないですネ。

でもさらにきれいにするコツがあります。
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クリームのかけかた 2
クリームがけのコツ

クリームがけをする時ですが

さらにここで、私が先代の父から教わった秘伝というか奥義をお伝えしますね。

それは靴のある部分を重点的にブラッシングすると、

全体がすばやく仕上がり、しかもかなりきれいに見えると言うことです。

で、

その場所とは、、



甲革と底との接触する縁のくぼんだところです(コバといいます)。

そこを重点的にきれいにするつもりでクリームがけするのです。

まあ、部屋の掃除でも中心だけするより部屋の隅までやるとよりきれいに見えると

言うことと同じではあるのですが、靴は部屋などに比べたらとても小さいので

コバの部分を重点的にかければ他の部分はそのままか少し補足するくらいで

終わってしまいます。

ただし底材との接着面が革を面出しするのに削って薄くなっていますので、

もちろんクリームの付けすぎは禁物です。

ブラシなどは年季が入ってくるとクリームも染みこんできますので

たいした量を使わなくても結構きれいになるものです。

「秘伝」というには「な~んだ」と言う方法に感じられるかたも多いかと

思いますが、コバの部分をきれいにするという感覚で手入れをすると

ただ磨いているよりは遙かに効率よくきれいになると言うことが

実感できますのであえてお伝えさせていただきました 

ぜひ磨かれるときコバに気をつけてみてください。



ポリウレタンソールの保存
減りにくいけど長持ちしにくい?

最近ポリウレタン素材を使ったソールのものが増えていますね。

はじめはスニーカーなどに使われてから、

軽くクッション性もよく摩耗性にも強いので、

今ではウォーキングシューズばかりでなく

ほとんどのジャンルのシューズに使われています。

ただし、そのような便利な素材でも避けられないのが、

年数が経ったものを久しぶりに履こうとしたときに

ソールが割れてしまったりする経年変化です。

それは加水分解と言って空気中の水分と反応して起きてしまう現象です。

 ふだん仕舞ったままで、ここぞという時に履こうとしたら一回も履かぬままに

割れてしまっていたり、また出かけた先でポロポロと破損が始まり、そのままでは

歩けない状態になってしまいます(登山靴など山の中で起きたら笑えませんね)。

 完全に防ぐ方法は、、、、残念ながら化学製品ですのでありません。

劣化を遅くする方法として、風通しの良いところに数ヶ月に一回くらいの割合で

日陰乾しをしたり靴のそばに湿気取りを置いておくことをおすすめします。

 耐用年数は3~5年と言われていますが、これもいちがいに言えず、

10年以上仕舞いっぱなしでも平気で履けたりなどといったことも聞きます。

この例は稀な話としてとらえて、ウレタンの靴はそのような性質を踏まえて

お取り扱いください。

できれば靴の方にも製造年月日が明記されていると目安になるのですが、、、、